19世紀、小麦粉、砂糖、家畜の餌などは木製や金属製の箱が使われていました。それらは重くかさばり、さびるなどあまり使い勝手の良いものではありませんでした。後にミシンが発明され、アメリカ国内での布の生産能力も高まり1880年頃生成りの布袋となりました。
19世紀末に大流行したパッチワークキルトが一度廃れ、再び流行したのは大恐慌時代の1930年頃です。それまでずっと生成り布だったフィードサックを花柄やかわいいプリント柄にしたところ大ヒットとなり主婦達は競ってかわいい柄の袋入を買い求めるようになりました。このアイディアはケンタッキー州の飼料会社セールスマンとの噂も聞きましたが定かではありません。そこでどのメーカーも専属のデザイナーを雇い主婦の心をつかむ新柄の開発に力を入れ1950年頃までに様々な色、柄のフィードサックがつくられました。柄の善し悪しが商品の売れ行きの鍵となったのです。

不景気で苦しい生活の中、主婦達は用品店で美しいプリントファブリックを買いたい気持ちをおさえて、フィードサックの縫合せのひもを大事にほどき愛する家族の為にフィードサックの有効活用にいそしみました。それはキルトに始まり家族の洋服、下着、パジャマ、ティータオル、シーツ、子供服、カーテン、帽子etc........
家庭内の布製品はありとあらゆるものがフィードサックで作られました。
主人(アメリカ人)の母はカンザス州の農家の出身で、幼少時代はまさしくフィードサック全盛期でした。やはり洋服はフィードサックで作ってもらっていたそうですが、これまた丈夫でなかなか新しい服が作ってもらえず大キライだったという微笑ましいエピソードを聞きました。義母はフィードサックを手に取り「懐かしい〜〜!」と目を細めます。「わたしのお母さんはこの同じ柄の黄色いワンピースを着ていたわ!ワンピースの裾をにぎりしめていたのを今でも覚えている!」フィードサックの柄により約80年の時を越えて記憶がよみがえるようです。
小さい頃、お父さんと一緒にトラックに乗りこみ飼料会社に到着すると「今度の服はどれがいい?!」とまだエサの入った山積みの袋を指差して聞いていたたそうです。
飼料会社はトラックで各農家を訪問販売していたそうですが、順番が最後の方になればなるほど好みの柄は残っておらず、同じエサ.同じ値段なのにちょっと納得いかないのもわかります。そこで前もって1件目のお宅と到着時間を調べ、そこまで出向いてトラックを待ち、好みの柄を予約をして自宅でフィードサックの到着を待ったという涙ぐましい努力の話も聞きました。
また、大人用のワンピースをつくるにはフィードサックが最低4枚必要ですが家畜の少ない家庭では一度に4袋買う事ができないので飼料会社の倉庫に同じ柄が揃うようにおとり置きをしてもらいました。おとり置きコーナーにはスミス夫人、トーマス婦人.........と名前の紙が貼付けてあるカラフルなフィードサックが並んでいたそうです。
飼料会社はフィードサックの販売促進のためのデザイン冊子も作りました。エプロンや子供服、お父さんのネクタイまで、あますことなくフィードサックを有効活用出来るように様々なアイディアが掲載されていました。そのうちにフィードサックを切って縫うだけですぐ出来上がるぬいぐるみやエプロンがプリントされたり、そのままカーテンになるようボーダー柄などお手軽に生活に役立つフィードサックがドンドン開発されていきました。
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1950年頃にはフィードサックの柄にとどまらず袋の中にスプーン、ピッチャー、台所たわしなどのおまけ大作戦が火花を散らし、各飼料会社の競争はさらに激しさを増しました。
こんなに人々の生活に密着し心を魅了したフィードサックがなぜ消えてしまったのでしょうか。それにはいくつかの理由がありました。
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1. 紙の生産力が高まり布より紙袋の方が安価でできるようになった事
2. 紙の方がより衛生的というキャッチフレーズがすぐ浸透した事
3. 1950年頃発明された化学繊維、化学染料は今までのコットンでは存在しなかった色合いや風合いがとても新しくモダンで、時代の流れとともに流行が変わったこと
4.この頃から盛んになてきた女性の社会進出によりアイロンがけが必要なく洗濯が簡単な化学繊維が爆発的な人気となったこと
などの理由でフィードサックの歴史は幕を閉じました。
現在、アメリカでのフィードサックは日本のように手芸やキルト作りにさほど直結していません。それより『何枚持っているか!』というコレクターズアイテムです。フィードサック愛好家達は集会をひらきコレクションを自慢しあったり交換したりしてフィードサックを楽しんでいます。フロリダ在住のコレクターの方は3万種類収集しているらしく、ベースボールカード用のフォルダーに色柄別にコレクションされているとか。現在もまだ増え続けているそうですからこれまた驚きです。何種類の柄のフィードサックがあるのか?それは今だに不明です。
フィードサックはコットン100%でとても丈夫な上に吸水性がよく洗濯もどんどんできるのでいろんな作品に幅広く使えます。パッチワークだったらやっぱりいろんな生地を混ぜずにフィードサックだけでつくると仕上がりがとてもまとまります。この時代の染料という観点でいろいろ混ぜない方が色のトーンが揃うようです。
こんな物語を思い浮かべながらあらためてフィードサックを眺めると、この懐かし布の風合いにアメリカの太陽のにおいをのせて運んでくれたような、あったかな気持ちになるのは私だけでしょうか。22世紀まで語り継ぎたい物語のある布「フィードサック」です。

このフィードサック物語はペンシルバニア州在住バーブさんはじめ、たくさんのフィードサック愛好家さん達、アンティーク布業者さん等アメリカの皆様に長年かかってうかがったお話をまとめたものです。皆さまのフィードサックをより深く感じていただく気持ちにお役に立てたらうれしく思います。